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債権者の心得 日下公人氏の論点

 2010-10-29
たまりんさんのブログに非常に素晴らしい論点があったので転載の転載をします。
日本が世界一の債権国であることを知らない人も多いと思いますが、これは財務省が出しているデーターでも確認できます。本邦対外資産負債残高という統計を見ると、日本の対外純資産は266兆円と出ています。これは世界一の額です。この事実から、評論家の日下公人氏が切れ味鋭い論点を展開されています。
 
 
転載始め
【世界一の債権国、日本に味方はいない】
  <東京財団前会長 日下 公人氏
2007年3月8日
 日本は現在、世界一の債権大国である。GNP(国民総生産)が500兆円だが、それと同じ500兆円ほどを世界中に貸している。 GNPと同じ規模の債権ということは、それを債務国が返してくれたら、日本人は丸1年間、働かなくてもいいということだ。もし10%ずつの利息をくれたら、年間50兆円も入ってくる。そうなれば、日本国民は税金をいっさい納めなくてもよくなる。
 
 このように、日本は気前よく貸したり投資して、世界一の債権国になっているが、それなのにあらゆる議論でその自覚がなく、日本は貧乏だとか、輸出をして金を稼がなければ生きていけないとか、相変わらずそうした話ばかりが聞こえてくる。
 それから、世界各国に金を貸したり投資したり援助したりしているから、みんな感謝しているはずだと日本人は思っているが、これは大間違いで、本当はみんな日本の敵なのだ。金を貸すと嫌われる。そんなことは当たり前であり、どうして日本人は忘れているのだろう。
 多くの日本人は、他人に金を貸すときの気持ちがあまり分かっていない。日本人には「何とかお金を借りて、それを真面目に返しました。わたしは立派な人間です」という感覚の人がとても多い。だから、金を貸せば感謝されるだろうと思っているが、外国でそんな感覚を持っている国はない。そのことを日本人は知らなすぎる。
 政策研究をしたり、日本国家の将来を考えたりする会合はいろいろなところで開かれている。それらに参加すると、「根本が抜けているな」とわたしはいつも感じる。つまり「金を貸す国はどうあるべきか」という議論がまったくない。貸したら真面目に返してくれる国を想定して議論を進めるのは、根本的に間違っている。
<債権取り立てで頼りにならない日本政府>
 世界一の債権国として、日本は外国に対してどういう態度をとればよいのか。それを考えるには、いくつもの段階を踏んで論理を積み上げていかなければならない。
 まず最初の段階は、世界の常識と日本の常識が、まるで違っていることを認識することである。国際金融において、「借りた金はなるべく返さない」のが世界の常識で、「死んでも返そう」が日本の常識だ。外国は返さないのが当たり前だと思っている。
 さらに、なるべく返さないだけではなく、国際金融では、外国は踏み倒そうとする。理由は、国際社会には警察も裁判所もないからで、国際金融にはそういう危険があることを、日本は認識する必要がある。
 それから、日本政府は外国政府に対して交渉をしない。特に民間債権の取り立てに関しては逃げてしまう。「民間のことは民間でやってください」と、大使館や領事館が逃げてしまう。
 そんな政府は世界では珍しい。外国の政府は民間の債権だろうと、一生懸命取り立てに励んでくれる。しかし日本政府は民間債権をかばってくれない。だから民間企業は政府を頼りにしてはいけない。
<債務国には軍隊を出すのが国際常識>
 第二に、債務を踏み倒す国に対しては軍隊を出すのが国際常識である。国家対国家はそれぞれ主権を持っているから、軍事力に対してだけは言うことを聞く。本当に軍隊を出すか出さないかは別として、まずそれが常識である。
 それでも債務国が債務を果たさなければ、軍隊が駐留することになる。「返すまでずっとそこいるぞ」と。実際、世界中でそうしたことが行われている。
 ずっと金を借りている国では、やがてどこかの国の軍隊が軍事基地を持つことになる。日本も昔は米国から金を借りていたから、その名残で今も軍事基地がある。
 本来なら、今は米国に金を貸しているのだから、「帰れ」と言えばいい。そして「ちゃんと返済するかどうか心配だ」といって、逆に日本が米国に軍隊を駐留させていいのだ。
 そんなことは国際関係論のイロハの「イ」である。だが日本でそれを言っても、だれも賛同しない。ワシントンで言えば、「それはそうだ」と賛同してもらえる。
 かつて日米貿易摩擦のころに、わたしはワシントンで米国人にこんな話をした。「米国は日本に国債を売りつけている。とめどもなく日本から借金をしている。やがて米国がその金を返さなくなったら、日本は取り立てるために、ホワイトハウスの横に日本の「債権取立回収機構」というビルを建てるだろう。そのビルの名前は“イエローハウス”になるだろう」と。
 そんな話を聞いても、米国人は怒らなかった。ユーモアも通じたのだろうが、「理屈で言えばそうだ」と言って、笑っていた。
 その“イエローハウス”が建ったとき、日本の軍隊が米国に駐留すると言うと、これは無用な制裁になるが、しかし、相手が米国ではなくもっと小さい国であれば、そういうことになるだろう。
<債務国から「保障占領」という担保を取る>
 金を借りている国が「軍隊の駐留を認めない」と言えば、日本は自然に、もう金を貸さなくなる。返してくれるかどうか心配だから、当たり前のことだ。
 すると相手国は困って、結局、「どうぞ駐留してください」となる。だから国際金融をやっていると、必ず軍事交流になってしまう。債務国は軍事基地を提供し、債権国は軍隊を海外派遣するようになる。これは当たり前のことで、世界では珍しくもなんともない。
 もしそれを避けようとするならば、「保障占領」という前例がある。つまり担保を取る。例えば、第一次世界大戦が終わったとき、ドイツはフランスに対して弁償金を払う約束をした。しかし、ちゃんと払うかどうか分からない。そこでフランスは、ルール地方の工業地帯に軍隊を入れて占領した。
 これは侵略でも占領でもない。担保に取っただけ。ドイツがちゃんと払えば、いずれ軍隊は引き上げると、フランスは約束した。これが保障占領という制度である。
 だから米国がもっと金を貸せと言うのなら、日本は米国のどこかを保障占領しなければいけない。これは全然おかしくも何ともない。
 日本の会社は世界各国で、担保も取らずに数千億円も投資して石油を掘ったり、プラントを造ったりして、没収された。日本人は大変お人よしだという例だが、そういう前例は枚挙にいとまがない。
<戦争になったら周辺国は債務国に味方する>
 次に、債権国と債務国の仲が悪くなって戦争になったとき、周辺の関係国や利害関係国はどちらの味方をするのだろう。これについても日本と外国では、常識がまったく違う。
 日本では、関係国は当然、債権国である日本に味方をしてくれると思っている。しかし現実はまったく逆である。
 今、日本が中国に「貸した金を返せ」と言い、中国は返さないと言って、戦争が始まったとしたら、周辺国はどちらに味方するだろう。日本が正しいのだから周辺国は日本に味方をしてくれると、日本人は思っている。だがわたしはその逆だと思う。周辺国はみんな中国の側について、日本に宣戦布告すると思う。日本から金を借りている国は、全部中国について、日本に宣戦布告する。
 それはなぜか。どうやら中国が勝ちそうだからだ。もしも中国が勝つなら、中国に味方しておけば、自分たちの日本からの借金をチャラにしてもらえる。それだけでなく、日本の財産をみんなでもらって山分けしてしまおうというわけだ。
債権国である日本は世界一立場が弱い
 前例はたくさんある。例えば、第一次世界大戦のときに、ドイツと英国・フランスが戦争をした。そのときに米国は英国・フランスの方に付いた。その理由の一つは、米国が英国とフランスにたくさん金を貸していたからだ。
 米国はドイツには金を貸していなかった。だから米国中の財閥や銀行、資本家は、英国とフランスに勝ってほしかった。ドイツが勝ったら、自分が英国やフランスに貸していた金がパーになる恐れがある。それは困るから、財閥や銀行、資本家は当時の大統領に英国・フランスの側に付けと、強力な圧力をかけた。
 つまり、みんな自分が投資した国がかわいい。そう動くのがお金の世界の論理だ。だから周辺国はまず武力が強くて勝ちそうな側に付く。それから、自分が金を貸している方に付く。金を借りた国には付かない。正義なんかは後回しである。
 日本は今、世界中に一番たくさん貸している国である。それは、世界で一番立場が弱い国ということだ。世界中から「日本が負けて借金がパーになってほしい」と思われている。
 中国の側について日本に宣戦布告して、中国が勝ったら自分たちも戦勝国だと乗り込んで来て日本から財産をぶんどる。それが国際常識である。これからの日本について考えるなら、現在のそうした状況を大前提としなければいけない。
転載終わり
 
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