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「生き残ってきた」自由貿易

 2013-05-01
変わったタイトルをつけてみました。

安倍首相がTPP参加を表明したことは大いなる前進だと考えます。2012年の衆院選でTPPに反対して当選した自民党議員は一体どういう落とし前をつけるのか、今後の見所ではありますが、農政族が多数いる中での勇断は評価できます。

さて、TPPはどうしても農業にばかり話が及びますが、それは誤解を招きやすいと言えるでしょう。

TPPは製造品や知的財産権まで含めたサービス分野まで網羅しているからです。つまり、貿易だけではなく投資も対象となっていることを知らなければなりません。

TPPの原則は、貿易や投資の自由化に必要なルール設定です。参加国で関税を撤廃し、貿易の障壁となっている非関税障壁まで原則撤廃していくということですが、巷間の議論ではすぐにも日本の農業や社会保障が外国勢によって侵略されるかのような印象論を使っているのが気になります。

TPPは参加国の同意の下でルール設定が行われます。いわゆる「聖域」を設けたいならば、10年間程度の猶予が与えられます。その間に国内で改革を進めることは十分可能です。例えば、TPPに関係なくコメの減反政策を進めて米価を下げることや農協に頼らない企業家精神を持った農家、農業の法人化などは別にTPPとは関係なく進めることができる政策です。

よって、TPPに参加したからといってすぐに農業や社会保障が崩壊するわけではありません。ましては、国体まで変革される「亡国最終兵器」でもありません。さらに言えば、アメリカがリーダーシップを発揮するといっても、アメリカでさえ議会の承認と参加国の同意なしでは何もできません。アメリカによる日本市場の略奪というのは極端過ぎます。


問題としなければいけないのは、所得分配の不公平感が存在することです。

国際貿易の原則は相互利益だと言われるのでおかしいのではないかと思われるでしょう。

この場合の相互利益とは、各国が自国で比較優位を持つ産業に特化することで世界全体の生産量が拡大すること。自国で生産した場合には高くつく製品や食料を輸入することで消費者が利益を得ることです(いわゆるリカードの比較生産費モデル)。つまり、輸出が善で輸入が悪ではないのです。

ただし、輸入品を競争していた産業にとっては一大事です。

海外から安価な製品が入ってきたことによって失業者が出たり、場合によっては廃業に追い込まれることは十分にあります。農協などが堅固にTPP反対を主張しているのはこのためです。

貿易は相互利益であると同時に損失を被る産業が出ることも事実です。貿易の原則は、広く薄く国民の利益になることに特徴があります。よって、損失を被る産業からの強い政治的主張がまかり通ると、国内消費者の犠牲のもとにおいて保護貿易が正当化されるわけです。農業分野は、多かれ少なかれ各国が保護を主張する悩ましい分野なのです。



さて、もう一度原則に戻りましょう。

貿易のメリットは相互利益にあると述べました。なかなか理解しにくいですし、輸出産業をも大事ではあります。それでも、国際貿易においては輸入のメリットこそが力説されなければいけないわけです。交換の利益とも呼ばれる原則は、240年前のアダム・スミスが記した『諸国民の富』以来変わっていません。スミスは、むしろ輸出だけが正しいとする「重商主義」を徹底的に批判したことに注目しなければなりません。


技術的には、輸出価格を輸入価格で割ったものを交易条件と呼びます。例えば、貿易を通じて輸入価格が低下した場合、輸出一単位と交換できる輸入品が増えることを意味します。為替レート言えば円高がこれにあたります。言い換えれば、円高は交易条件が改善したと言えるのです。

ただ、日本経済の構造上、円高はGDPを下げる一要素になっているという原則も無視できません。為替レートが円安にふれることによって製造業の輸出価格が低下するので、国際市場で日本製品が割安になります。日本の大企業は、売上に占める輸出の割合が半分以上を占めているケースもあるので、どうしても円安が好まれるのでしょう。ただし、何度も指摘しなければいけないのは、本来の貿易の利益は輸入にあるということです。

日本経済では、資源の輸入が不可欠です。最近で言えば原発事故以来LNGの輸入が注目されています。東京電力や中部電力が原発を停止したことによってLNGの輸入がかさんだために赤字になったという記事だけを見れば、輸入は悪のように見えなくもありません。この場合の見方は、従来であれば国内で原子力で発電した電力が供給できたのが、事故によって停止され、火力発電に切り替わったために生じた現象です。エネルギーの調達コストがかさむことで、電力会社の利益が圧縮されたことが赤字の主な原因です。


しかしながら、そうは言っても国際貿易をしているからこそエネルギーを輸入することができるのです。確かに、これまで国内の資源をつかって発電を行い、利益を上げていたことは事実で、火力に代替したことで利益が圧縮されました。それでも、電力を供給することはできます。電気料金の値上げというコストもありますが、日本が鎖国をしていたならば、今頃国内は大混乱に陥ることになります。資源を国内で全て賄うという発想もありますが、それは現実的ではありません。グローバル化の時代に国を閉じることになれば、むしろ日本は生きていくことはできません。

以上、様々な論点を述べてきましたが、貿易は相互に利益があります。経営用語を借りれば、貿易はプラスサムゲームであり、保護貿易はゼロサムゲームです。

アダム・スミス以降、J・S・ミルの幼稚産業保護論やドイツ人のF・リストによる保護貿易論など、学問的にも保護貿易の理論的根拠は多数あります。

近年では戦略的貿易政策が新重商主義者に悪用されるということが80年代から90年代にかけてありました。

戦略貿易政策は、08年にノーベル賞を受賞したP・クルーグマンらが中心になって編み出したものです。彼が学問とした扱ったのは、当時のハイテク産業などで見られた規模の経済性(収穫逓増産業)が存在する場合は独占や寡占、独占的競争が起こりやすく、ケースによっては保護貿易が最適になることを理論的に示したことです。エレガントなモデルはたちまち当時の経済学者を魅了し、戦略的貿易政策はアメリカの通商政策に悪影響を与えましたというのが歴史の真実です。

余談ですが、クルーグマンは、一時は自由貿易を軽視したような時期がありましたが、上記の通り今では自由貿易を強く支持しています。彼は、日本の基準で言えば左翼的な精神態度(リベラルともいう)を持っていますが、市場経済や自由貿易は支持しています。この辺が日本の左翼ないし左派と根本的に異なります。


とまれ、自由貿易は長い時間をかけて様々な挑戦を受け続けてきました。

日本でもTPP参加を通じて自由貿易が槍玉に上がっています。所得分配に影響する以上、今後も貿易問題は政治化するでしょう。ただし、これまでのところ自由貿易は消えることなく生き残ってきました。TPP、EPAなど様々な名称が乱立していますが、貿易や投資を自由化していく流れは今後も強まっていくことでしょう。


その意味で、TPPは自由貿易が再度挑戦を受ける文明実験となります。そして、日本国内でも農業や社会保障関係の保護体質を改善できるかどうかのリトマス試験が始まろうとしています。

経済学者のはしくれとして、私は強くTPP参加を支持します。そして、今後も貿易や投資の自由化促進を是としますし、日本国内における規制緩和や減税を推し進め、「自由からの繁栄モデル」を築きあげようと考えております。


多少長くなりましたが、最後まで読んで下さった読者の皆様、ありがとございました。

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